はじめに

 以前購入した100V 22Wセラミックタイプの半田ごてが容量が小さいため、半田付け対象が
非常に限られており殆ど出番がないため、半田ごての電力容量をアップする事を目的に検討を
開始した。
 コテの容量を上げるには電源電圧を上げる事になるが、商用電源を単純にステップアップする
には昇圧器の規模を大きくなり割に合わない。よってここでは、商用電源を直接直流変換する
方法を検討する。
 整流ダイオードおよび整流コンデンサーのロスを考えず、コンデンサ容量が消費電力より
十分大きい場合、原理的には商用電源電圧の√2倍近く昇圧が可能である。現在商用電源として
使われているAC100(V)電源は実効値での表記が使用されている。すなわち、この電源の電圧は
ピーク電圧で表すと約±141(V)になる。回路ロスを考慮しなければDC141(V)近くの電源電圧が
得られる事になる。これは電力に換算すると2倍に相当する。 
 ここで問題は低容量半田ごての電力を単純に昇圧すると発熱で小手先を痛めてしまう危険性
がある。よって、半田ごてに温度コントロール機能を付加する必要がある。
 半田ごての自動温度制御回路をWebで検索してみると、いろいろな回路の紹介がなされている
が、その殆どはトライアック半導体素子を使ってAC電源を直接スイッチングする事で温度制御
を行う方法が紹介されている。この方法は回路が非常に簡素化出来るが、整流回路手前のAC電源
を直接スイッチングするため、整流回路後の整流コンデンサーを大きく出来ない欠点がある。
その理由は、コンデンサーに流れ込む切り替え時の瞬時電流でトライアックの損傷を来す可能
性がある。よって、コンデンサーを大きく出来ないと整流後の電圧を大きく上げる事は難しい。
 ここでは、整流回路後の電圧制御方式を採用している温度コントロール回路として下記参考
文献を参考にさせてもらいました。
 今回の大きな違いは電源スイッチング素子として、NチャンネルパワーMOSを用い、その制御を
フォトカプラートランジスタを使って行っています。半田ごての温度に相当する抵抗値を検出
するIC回路の電源はツエナーダイオードで構築しており、トータルの回路は比較的シンプルな
構成になっています。
半田ごての予備調査

 半田ごての知識が殆どないため、予備実験を行いました。
使用半田ごて  ---  メーカ:大洋電機産業 型名 :CXR-30 100(V) 22(W)

 1) 常温24℃でのこて本体の導体抵抗をテスターで測定 結果 = 233(Ω)
 2) 直流100Vの電源を接続して小手先の発熱が飽和する時間を5分後と仮定して、その時のこて
  の導体抵抗を測定(小手先は空中放置) = 724Ω
 3) (参考データ:半田が溶け始める温度の導体抵抗が 約560(Ω))

温度制御可変幅をこの抵抗値の範囲に収めれば良い事になる。
ちなみに、半田ごての定格値 100(V) 22(W)の導体抵抗値は(VxV)/W=454Ω。この半田ごての定格
電力値がどのような条件での値なのか解っていませんが、22W半田ごての電源投入時の消費電力
は100(V)x100(V)/233(Ω)=43(W)の電力を消費されている事になる。
回路図(クリックPDFファイルへリンク)


主な使用部品 (回路図参照)

 SWT1: 家庭用電源SWT
 CNN2: 家庭用電源コンセント
 F1: 電源Fuse(100V 2A)
 D1: ブリッジダイオード(GSIB6A60 600V 6A) ---逆耐圧200以上推奨
 C1: 平滑電解コンデンサー(180uF 400V) ---耐圧200V以上推奨
 C2: 積層セラミックコンデンサー(0.1uF 50V)
 Q1: Nch Power MOS トランジスタ(2SK447 250V 15A)
 PHTTR1: フォトトランジスター (TLP521-1)
 D3,D4: ツェナーダイオード
 R1,R5: 抵抗器(18KΩ 2W)
 R10: 抵抗器(27KΩ 2W) ---- R1,R5と同じ抵抗器でも可能
 R9: 抵抗器(1.5Ω 2W)
 IC1: コンパレータIC(LM339)
 VR1: 温度調整用可変抵抗器(100KΩ) --- パネル取り付け用
 VR2: 多回転可変抵抗器(500Ω) --- 将来の拡張用に可変抵抗器を使用
 D2,D5: 発行ダイオード(MTZJT-7210B 10V 500mW)
 その他抵抗器は1/4W品を使用

部品はホームセンターと秋月電子通商(通販)で入手可能
但し 2W抵抗器とツェナダイオードはオークションで入手
回路動作

 上記回路図を元に簡単な説明を行います。 まず、商用電源(関東地域)100(V) 50(Hz)をコンセット
から電源スイッチ、ヒューズを通して、ブリッジダイオードD1に加える。商標電源100(V)のピーク
電圧は±100(V) x √2≒±141(V)の正弦波であることから、この波形を両波(全波)検波を行い平滑
コンデンサーC1で直流電圧に変換する。ここで負荷電流が流れないと仮定すると発生する直流(DC)
電圧は約140(V)に近い値が得られる。(ダイオードの純電圧降下分は低下する)
 次に抵抗R5はパワーMOSトランジスタQ1がOFF状態の時、後段の温度検出用コンパレータICの入力
に掛かる電圧が無くなるため回路動作検出に必要な電流をR5を通して流しておく。 ここで、先に述
べた平滑された直流電圧は抵抗器をR5を通して温度設定用電圧を決めるR7,VR1とR8,VR2で分圧さ
れた電位をV1とすると、この電圧をコンパレータIC IC1の負入力端子に加える。
 次に半田ごての温度を検出する為に、半田ごてに流れる電流値を検出する抵抗器R9に発生した
電圧をV2とすると、このV2電圧をコンパレータIC IC1の正入力端子に加える。
 半田ごての温度が低い場合、半田ごての導体抵抗が低いためR9に発生する電圧が先の分圧値V1
より高くなる。これによってコンパレータIC出力はHIght状態になりフォトトランジスター
 PHYTR1内のフォトダイオードには電流が流れない。よってフォトトランジスターがOFF状態になり、
PowerMOSトランジスターQ1のゲート、ソース間に電圧が加わりQ1のドレイン、ソース間が導通
(ON)状態になる。この状態で半田ごてに電圧が加わる為こてが発熱する。
 こてが発熱されると発熱量に応じて内部抵抗が上がるためR1に発生する電圧V2が低下する。
このV2が先のV1より低くなるとコンパレータICの出力がLow状態に切り替わる。この時、PHTTR1の
フォトダイオードに電流がR6を通して流れる。これにより、フォトトランジスターがON状態になり、
Power MOSがOFF状態になる。
 この動作を繰り返す事により半田ごての温度を設定値V1にする事が可能である。また、コンパレ
ータICの電源はR1とツエナーダイオードD3電圧10Vから造っている。IC1の負荷電流はR6で決まり、
最大で1mA程度しか必要でないためツェナー電流は4~5mA流せば十分である。
組み立て


基板部品面  基板サイズ(72 x 95mm)     基板半田面

ケースへの組み込み完了

ラベル作成
 ボリュウムのパネル作成 (PhotoImpactソフト使用)


ラミネートフイルムで挟む、後は熱で固めれば終了

 
完成!

  
電圧測定結果

測定方法
 半田ゴテに掛かる電圧はテスターによる平均電圧値を測定。
入力商用電源 AC100(V) 50(Hz)

結果
  整流ダイオードの出力電圧 135(V)
  半田ごてに掛かる最大電圧 131(V)
  これから、22(W)半田ごての立ち上がり温度特性は約38(W)の半田ごて相当の性能が得られる事
 になります。

<<注意>>
 この種回路は入力のAC 電源はトランス等で絶縁されていないため、回路グランドは大地から
見ると電位を持つ可能性があり、場合によっては感電する危険性を含んでいます。
よって回路内部品及び回路グランドを含め安易に素手で触れないように!
使用後の所感
  この回路を使って実際の半田付けを実施した感じでは、コテの立ち上がり温度が早くなり、
思った以上に使い勝手がよくなった。また半田付けする際にコテ先が、設定温度に達すると
ランプのが消えるので分かり安い。

参考文献